弁護士の探し方

弁護士にも、医師のように専門や得意不得意があります。
眼科医に骨折は直せません。整形外科に行く必要があります。
同じように離婚問題に強い弁護士もいれば、保険に特化した弁護士もいます。
また企業を相手にしたビジネス専門の弁護士もいます。
交通犯罪に遭った被害者・遺族であれば、被害者側に立った交通事故を得意とし、刑事裁判、特に被害者参加制度にも精通した弁護士に依頼しなくてはなりません。

よく耳にする話として、相談に行って「交通事故に特化しています」ということを言われ、実は保険示談に特化しているだけだったということもあります。
損害賠償や民事訴訟は、刑事裁判の終わった先にあるものです。
人によっては消化試合に過ぎないと考える被害者・遺族もいます。
しかし刑事公判こそ、加害者の罪を問い、事件の真相を知り、加害者と対面して自らの思いを伝えることのできる場となります。
それをないがしろにして示談優先にされてしまったら、生涯悔いを残すことになってしまいます。
だからこそ民事に強いだけの弁護士では意味がないと考えます。

あいの会で受けるご遺族の相談のなかには、弁護士による二次被害の話もよく出てきます。
例えば検察とのやり取りで役立ってくれると思っていたら、被害者参加などの知識も経験もないために、刑事裁判は何もできないまま執行猶予付き判決で終わってしまい、気がつけば賠償金の金額の話ばかりされていたというような話です。
なかには「刑事裁判には弁護士など必要ない」とまで言い放つ弁護士の話もありました。

また弁護士二次被害でありがちなパターンとして、友人または知人に弁護士を紹介してもらったというケースです。
安易な形で弁護士を紹介してもらい、専門性がないと気づいても、友人や知人の手前、断りづらい思いを抱えたまま刑事裁判が始まってしまい、どうしても違和感や不信感を拭えずに、裁判途中でセカンドオピニオンを求めるような格好で、あいの会に相談してくるというケースです。

それぞれの専門や得意不得意があるなかで、自分にあった、本当に一緒に闘ってくれる弁護士に巡りあうことはとても大切なことですが、その見極めはとても難しいことであるのも事実です。
しかし難しくても、あきらめず、しっかりと自分と向き合ってくれる弁護士を探すことは非常に大事なことです。

もちろん例え交通事故や被害者参加が専門外であっても、本当に丁寧に調べながら真剣に対応してくれる弁護士もいます。
あくまでもこれらのケースは一例であり、全ての弁護士についての話ではありません。

裁判はお店のようにメニュー表がはっきりしているものではありません。
したがって検察官と被害者弁護士とのやり取りのなかで一番必要なのはコミュニケーションです。

一件一件全ての事件が異なり、それぞれ裁判の進み方も加害者の性格も異なります。
裁判官や検察官の能力によっても差が出てしまいます。

さらにその裁判官や検察官を私たち被害者・遺族が選ぶことはできません。
その中で唯一私たちが自分の意志で選ぶことができるのは弁護士だけなのです。
私たちの気持ちに寄り添い、私たちの望む闘い方をしてくれる弁護士の存在は、私たち被害者・遺族という立場の支えになってくれます。
ただしカウンセラーのように一から十まで聞いてもらえるということではありません。

法的根拠の中で、どのような形で加害者を罰したいのか、またはどのように加害者に対峙していきたいのかなど、被害者・遺族側のニーズをしっかりと聞き取る役割が弁護士にはあります。
被害者・遺族が混乱してるなかで進むべき道を把握し、慣れない法廷のなかで交わされる法律用語を全て理解することは不可能です。

ですから事前にしっかりと本当に信頼できる弁護士を探すということを、どうか真剣に考えて行動してほしいと思います。

どうか交通犯罪の被害者・遺族の方は、決して一人で抱えることなく、本当に一緒に伴走してもらえる弁護士を見つけ、悔いのない闘い方をしてほしいと、あいの会では考えています。

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