インターネット上の誹謗中傷事案に関する書類送検を受けて

インターネット上の誹謗中傷事案に関する書類送検を受けて
― 犯罪被害者遺族への二次被害と、被害者支援制度の課題について ―

このたび、当会副代表理事の松永拓也に対するインターネット上の誹謗中傷事案について、徳島県在住の男性が名誉毀損の容疑で書類送検されたことを受け、当会としての見解を公表いたします。

2026年1月11日、池袋暴走事故で娘を亡くした松永が、娘が生きていれば10歳を迎える誕生日に、その思いをSNS「X」に投稿しました。その投稿に対し、「亡くなった娘で金稼ごうとしてる」などの中傷が行われました。

亡くなった家族を偲ぶ遺族の思いを傷つける行為は、到底看過できません。当会は、名誉毀損や誹謗中傷を決して容認しません。

さらに、投稿者が自ら命を絶つことをほのめかしたことで、被害者側が相手の生命の安全まで心配し、警察への緊急相談を余儀なくされました。松永自身も、さらなる精神的負担を受けました。

当会では、理事らと顧問弁護士が警察への対応や証拠資料の整理、関係者との調整に当たり、当日予定されていた被害者相談をキャンセルせざるを得ないなど、通常の支援活動にも具体的な支障が生じました。

今回、松永個人に対する名誉毀損については書類送検となった一方、当会に対する業務妨害については立件に至らなかったことを、大変残念に受け止めています。 刑事事件として立件されなかったからといって、実際に生じた業務への支障や負担がなかったことにはなりません。

また、本件を通じて、誹謗中傷被害者が直面する次のような課題を痛感しました。

第一に、証拠収集の負担です。 被害者自身が投稿内容や経緯を記録・保存し、膨大な資料を整理して被害を説明しなければならず、精神的に傷ついた状態で対応を続けることになります。

第二に、心理的支援の不足です。 名誉毀損などは生命・身体に対する犯罪とは異なるため、犯罪被害者支援制度によっては対象とならず、深刻な精神的苦痛を受けても、心のケアが置き去りにされかねない現状があります。

第三に、専門家への相談に伴う経済的負担です。 法的な対応には弁護士などの専門家の助言が必要となる場合がありますが、相談や依頼には高額な費用が生じることもあり、被害者が十分な支援を受けられない要因となっています。

今回、警察官の皆様には、被害者の心情に寄り添い、丁寧かつ真摯に対応していただきました。捜査に尽力してくださった皆様に、心より感謝申し上げます。

一方で、今回は当会の理事や顧問弁護士が協力して対応できましたが、支援者のいない被害者が、これらの負担を一人で抱えることは極めて困難です。

被害者が自ら証拠を集め、費用を負担し、支援先を探し続けなければならないのではなく、被害を受けた段階から、証拠保全の支援、心理的ケア、法律相談などにつながれる仕組みが必要です。

インターネット上の言葉も、人の尊厳や日常生活を深く傷つけることがあります。

誹謗中傷を許さない社会であると同時に、誹謗中傷によって傷ついた人を置き去りにしない社会であってほしい。

今回の書類送検が、言葉の重みと責任、そして被害者支援制度のあり方を社会全体で考えるきっかけとなることを、心から願っています。

一般社団法人関東交通犯罪遺族の会(あいの会)
代表理事 小沢 樹里


今回は誹謗中傷のみならず、問題が明るみになったあと、自死を仄めかす投稿が続いたことにより、精神的、物理的な負担が生じました。誹謗中傷をした方も、された方も、誰も幸せになることはありません。

また、誹謗中傷は民事上の責任だけでなく、その内容によっては刑事上の責任を問われる可能性もあります。

インターネットは、どこか現実とは切り離された仮想空間のように感じられることがあると思います。

しかし、画面の向こうにいるのは、感情を持った現実の人間です。インターネット上で発した言葉も、現実に人を傷つけることがあります。

匿名での発信であっても、インターネットの中だけで完結するわけではなく、現実社会で責任を負うことになり得るのです。

インターネットは仮想空間かもしれません。しかし、そこで生じる被害も、負うことになる責任も、決して仮想のものではありません。

一方で、私は、正当な批判や異なる意見まで封じたいとは思っていません。

誰もが自由に意見を述べられることは、社会にとって大切なことです。しかし、意見を述べる自由があることと、他人の権利を侵害する言葉について責任を負わなくてよいことは、別の問題だと考えています。

私が望んでいるのは、誰かが処罰されることそのものではなく、こうした被害が繰り返されないことです。

今回の件を通じて、一人でも多くの方に、インターネット上の言葉も現実の行為であり、自分の発信には責任が伴うということを考えていただきたいと思っています。

そして、言葉の向こうには必ず一人の人間がいるという、当たり前だけれど忘れられがちなことを、改めて考えるきっかけになればと願っています。

一般社団法人関東交通犯罪遺族の会(あいの会)
副代表理事 松永 拓也

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